伝統品種の価値を引き出す“貯蔵技術” ― 井田農園×CooI Innovation実験レポート
さつまいも市場は、健康志向の高まりや加工品の多様化を背景に、国内外で着実な拡大を続けています。独立法人農畜産業振興機構の調査では、[東京都中央卸売市場のさつま芋の価格は、平均300円/㎏前後の高水準で推移。
12/11/2025
さつまいもの市場規模と成長ポテンシャル
さつまいも市場は、健康志向の高まりや加工品の多様化を背景に、国内外で着実な拡大を続けています。独立法人農畜産業振興機構の調査では、東京都中央卸売市場のさつま芋の価格(令和3年)は、平均300円/㎏前後の高水準で推移しており 、令和5年産の収穫量は約71万7千トンが見込まれています 。




さつまいも農家の直面する課題と短期糖度上昇のメリット
埼玉・川越をはじめとするさつまいも産地では、焼き芋文化を支える一方で、様々な問題を抱えています。まず、掘りたてのさつまいもはデンプンが多く甘みが弱いため、焼き芋用途に適さず、繁忙期(9~11月)の需要ピークを逃し販売機会損失が生じやすいのが実情です。また、川越いもの伝統品種「紅赤」は掘りたてでは甘さ控えめ、寒さに弱い品種の為、貯蔵管理にもとても繊細な神経を要し、生産者離れが加速しています。さらに、近年全国的にみられる基腐病の蔓延により収量が激減し、収穫後の歩留まり確保(ロス削減)が経済的に重要となっています。従来のキュアリング(高温高湿貯蔵)は糖度向上に有効ですが、使用期間の短さと設備投資のハードルが高く、中規模農家には導入しにくいのが課題です。
こうした中、短期的な糖度上昇技術の導入は大きなメリットをもたらします。
収穫直後の芋を短期間で甘くできるため、繁忙期の即時販売が可能になり、売り場の回転率向上と廃棄ロス削減を実現。
結果、1本あたりの単価上昇で粗利を確保でき、特に病害リスクの高い品種で効果的です。また、伝統品種の価値再評価によりブランド化が進み、農家の収入安定化につながります。
特に焼き芋市場は2000年初頭からの第4次焼き芋ブームが加速している成長市場で、希少品種の高糖度商品に対する消費者ニーズが強いのが特徴です。 また、日本産さつまいもの輸出はここ10年で着実に拡大しており、特に輸出額は大きな伸びを示しています。2022年には輸出量5,603トン、輸出額約25億円規模となり、過去10年で輸出額がほぼ10倍に増加するという成長が見られました。
しかし、この市場拡大の裏側で、さつまいもの構造的問題が生産者を悩ませているという現状があります。
短期糖度上昇に関する実験概要
これらの課題解決に向け、三芳町の芋農家さんの井田農園のご協力のもとにCoolInnovationは、低温・高湿度環境での貯蔵試験を実施しました。
実験期間 2025年11月7日~(現在継続中)
貯蔵温度 ①0℃・95%RH ②13℃・95%RH 2温帯を設定。
対象品種 紅はるか、栗かぐや、紅赤、富の葉金時
試験概要 週1回の生芋糖度測定と農家による官能評価


実験結果からの課題解決提案
初期結果(3週間)では、低温帯(0~2℃・高湿度95~98%)で糖度上昇の伸びが大きく、全品種で急上昇を確認。元々寒さに強い品種として知られている「紅はるか」は甘さの向上が顕著に表れています。「紅赤」では糖度が9~11%向上し、官能評価では舌触り・しっとり感の向上が見られ、伝統品種の復活可能性を示唆しています。
生産農家さんからは、低温貯蔵×短期間での甘さ向上については大変驚いたとのご評価をいただきました。
従来、市場に出回るさつま芋は収穫後に糖度向上のため2ヶ月程度貯蔵し、出荷するのが一般的ですが 、本技術により最短3週間で糖度を9~11%向上させた芋を焼き芋として繁忙期に販売することが可能となりました。繁忙期需要に応え販売機会を増やしていくことで廃棄ロスの削減にも繋がっていくこととなります。
また、伝統品種「紅赤」の再評価から、観光地・焼き芋店での専用ライン構築で差別化を図り、高付加価値化を実現することも可能になります。農家・加工業者・小売のすべてにメリットが生じることで地域発展にも貢献していく未来が見えてきました。


食品加工・輸出業界へ広がる市場機会
本実証結果は、生産農家にとどまらず、食品加工メーカーにとっても大きな商機を示しています。短期間で糖度を引き上げられることで、焼き芋加工やペースト、スイーツ原料における原料品質のばらつきという長年の課題を解消し、安定した糖度・風味の原料調達が現実的になります。
これにより、レシピ調整や甘味料添加の負担を抑えながら、原価低減と商品品質の安定を同時に実現できる点は、大量調達を前提とする食品メーカーほど大きなメリットとなります。
また、本技術は輸出分野とも高い親和性を持ちます。日本産さつま芋は海外で高い評価を受ける一方、輸送期間の長さが課題でしたが、低温・高湿度・無菌環境での貯蔵特性を活かすことで、海上輸送(2〜4週間)そのものを低温熟成の工程として活用するという新たなモデルが見えてきます。
輸送中に糖度を高め、到着時には即販売可能な品質に仕上げることで、在庫リスクを抑えつつ高付加価値化を図る輸出が可能となり、日本産さつま芋の輸出モデルを大きく進化させる可能性を秘めています。
尚、今回の実証実験では農家さんの現状に即したかたちで貯蔵したため、キュアリング処理は実施しておりません。Cool Innovationの貯蔵コンテナでは、温度と湿度を変更することでキュアリング処理~貯蔵までを一貫して行うことが可能です。
キュアリング処理をプラスすることで腐敗リスクの軽減による長期保存とさらなる糖度上昇が見込まれると考えています。
糖度制御が拓く新たなサプライチェーン
本実証実験は、さつま芋の糖度向上を「時間任せ」から「制御可能な工程」へと変える可能性を示しました。
短期間での糖度向上は、繁忙期販売の実現、ロス削減、品種価値の再評価、加工原料の安定供給、さらには輸出モデルの進化へとつながります。
貯蔵を単なる保管工程ではなく、価値を生み出すプロセスへ。
本技術は、生産・加工・流通を横断した新たなサプライチェーン構築の鍵となるものです。
今回の実証結果を踏まえた導入検討、個別条件での検証、事業化に向けたご相談は、ぜひCool Innovationまでお問い合わせください。
ご質問やご要望
Cool Innovationは、果物や野菜の鮮度を保つための画期的なソリューションを利用、宣伝、研究頂ける協業パートナー、学術機関、政府機関、農業関係者、食品メーカーなどを探しております。
私たちの先進技術は、食品ロスの世界的な問題に取り組むだけでなく、空輸から海上輸送へのシフトを可能にすることで、コストと二酸化炭素排出量を大幅に削減します。
日本、タイ、フィリピンでの成功実績を持ち、信頼性の高いROIを保証するサブスクリプションモデルを採用している当社の技術は、既存の方法と比べて10倍*の鮮度保持を実現します。
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